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第六章
第三節 高齢社会への適応 −−薬学技術の応用−−

一方、今世紀は科学技術の時代である。それまで遅々とした歩みを続けていた薬学は、二十世紀の初頭から発展期を迎えていた。一九三〇〜四〇年代から急速に新医薬品の開発が進み、それまでの伝統的な薬剤に加えられたり、それに替えられるようになる。新しく開発された医薬品は、それまで間接的にしか薬物治療の手の届かなかった、感染症、肺炎、結核などに対して、直接有効な薬剤であった。医療では手軽にそれらの武器が使えることとなった。さらに開発の波は心臓病、高血圧症、精神病などの慢性疾病の治療薬にまで及び、手の付かなかった慢性病の薬物治療が行えるようになった。

この慢性病に対する治療の進歩は、それまでの医療の概念から、社会の構成をすっかり変えてしまうほどのものであった。長期ケアの重視と、その成功による人の寿命の延長である。ヨーロッパの国々はこぞってこの方向に焦点を当てることになり、薬剤供給もそれに追随する。いや、長期ケアに対する薬剤供給の体制作りが進んだからこそ、慢性病治療が軌道に乗ったともいえるほどのことである。

(一) 製剤化 −−慢性疾病への対応−−

こうした状況に敏感に反応して、それまで急性疾病の薬剤を中心として、原料薬を仕入れておき、用に臨んで調剤していた薬局の薬剤師は、慢性病の薬物治療に別の方法をとることにした。薬局の薬剤師は、安定した病状の、長期間にわたって変らない薬物治療に好適な方法を案出しはじめたのである。新しく開発された薬品をその度に調合調剤せずに、もっと単純化して患者に与えようとの試みである。つまり、長期服用型の薬への変化に積極的に取り組むことになった。

それまで、水剤とか散剤に調剤した薬は保存性が悪く、長期の服薬に適した形ではなかった。そこで、ヨーロッパの薬剤師達は、それまで、軟膏や丸剤を製造していた自分の薬局の製剤室を整備して、結晶や液状の原料薬を、慢性病の長期投与に適した、錠剤などに加工し始める。これが製剤である。実質的には、薬局の製剤室で医薬品製剤の製造が行なわれた。

この、薬局での製剤は調合と違うものである。わが国では、この時期の薬局に役割が与えられていなかったために、錠剤に加工する製剤というと、ただ薬をのみやすくするためであり、主として営業政策の面から、製薬会社がするものと考えられている。そして、薬局製剤とは風邪薬をあらかじめ分包して用意しておくという、散剤の調製ぐらいにしか考えられていない(病院薬局での製剤はかなり行なわれたが)。

ヨーロッパで薬局製剤とは、それが薬局の仕事であるとの古い伝統があった。今でも製剤は薬局で行なうのが本筋で、製薬会社は薬局から委任されて製剤を行なっているという考え方をしている薬剤師がいるし、製薬会社の製剤の価格は薬局製剤に準じた値段が通用している国もある。

使用頻度の高い薬について、含量を定めた注射薬、錠剤、坐薬、軟膏などを予め調製して薬局に貯えて置いたものであった。今でも、製薬会社の製剤に負けない精度・品質を持つことはもちろん、包装も見劣りしないし、消費者の信頼もある。この写真を見ても、わが国の薬局薬剤師は、それが薬局製剤として、薬局で造られたということを、誰も信じないであろう。

つまり、製剤とは慢性疾病型薬物治療の劣兵であり、これで慢性病治療が軌道に乗ったといえるほどのことなのである。

A 処方処理の効率化 −−わが国でいう医師の「指示」−−

そして重要なことは、こうした製剤によって薬剤師の仕事のやり方が変わってしまったことである。調剤(製)なしの交付だけの処方せん業務が生まれたのである。これを、いまだにわが国では調剤と呼んでいるが、実態はわが国でいう指示(書)での販売である。製薬会社もしくは自分の薬局(あるいは近隣の薬局)で製剤し、かつ包装した薬を処方せん(医師の指示)によって、その時点では調製などの作業なしに販売するのである。薬局以外の販売業の存在しない国であるから、もちろん、この販売は薬局のみで行われる(第七章第四節調剤料の二重取り参照)。

医師の指示という考え方はわが国の場合、終戦後の薬事法改正の際に取り入れられた。しかし、この米国に範をとった薬事法が生まれた頃のわが国は、終戦直後でそのような製剤がほとんどなかったし、医師が製剤を処方するという習慣もなかったために、自分なりの解釈をして、むしろ同時に生まれた一般販売業者を考慮して指示という概念を勝手に作り上げたものであろう。

現在のヨーロッパでは、薬物治療に用いられる薬(外来、在宅の場合)はその九〇パーセント以上が、包装された製剤をそのまま患者に渡すという、わが国でいう医師の指示の形で行なわれている。したがって、製薬会社が製造した製剤の場合、調剤料(製剤料)、容器代は製薬会社の取り分となり、薬局は販売したといい、薬局製剤の場合でも、製剤料、容器代を含んだ製剤の価格が算出されるため、調剤ではなく、製剤を販売したという。この場合、製造者の責任を明確にするため、その時点で開封しない習慣が一般化してきている。

もちろん、これで健康保険の薬剤の給付を行なっているが、この方法が慢性疾病の薬物治療の効率化、ひいては薬物治療費の低下をもたらした功績は大きい。

B 薬局製剤の返遷

薬価令(薬価を決める規則)には、製剤料としてかなりの規模の製剤の調製技術料を決めてあるのが普通であった。品揃えも消費者に直接売る薬(わが国でいうOTC薬)や、医療で使う基本的な薬剤を網羅したものである。初め、この動きはそれぞれの薬局で行なわれた。しかし現在は、一九七〇年代以降の医薬品製造承認や環境の厳格化(いわゆるGMPの実施など)に伴って、薬局の調剤や製剤も同じレベルの規制を求める潮流が生まれ、製剤する薬局の集約化、共同化が行なわれている。国によっては薬局の製造部門を薬剤師協同組合のような会社組織に衣替えしている。前にも述べたように、消費者の薬局製剤に対する信頼の高い国々であるから、国によっての違いはあっても、注射薬を含むこれらの製剤はジェネリックと呼ばれて、国によって程度は違うが、かなり汎用されている。

(二)薬局製剤の波及効果

薬局製剤が薬物治療の中で相当な位置を占めている国が多いが、これは様々な影響を諸処に及ぼしている。

A 基準製剤としての位置づけ −−試験所の充実−−

薬局での製剤の品目が急速に拡大した時期に、薬局の薬剤師は製剤する医薬品の品質を守るために、試験検査に力を注がねばならなかった。つまり、製造会社によって造られる製剤の品質の責任はその製造者にあるが、薬局で製剤する薬の責任は、すべて薬局の薬剤師が負うことになる。このため、薬剤師はその薬局に試験器具などを設備すると同時に、協同して(薬剤師会立の)試験所を設立してこの責任に対処することになった。この試験所はしだいに充実する一方で、薬局薬剤師の品質管理業務の水準を向上させてきた。前に述べた通り、製薬会社でGMPが実施されるに及んで、それまで薬局方(規格書)によっていた薬局製剤の規格を変え始めている。製剤の品質向上のため、これらの試験所が一括して医薬品の製造承認の申請を行い、薬局はその承認によって、一製造所の立場で製剤を行なうということにしている国がある。

現在、デンマークでは約五十の薬局が製剤施設を持ち、全医薬品消費の四〇パーセント、金額にして約二〇パーセントの薬剤を供給している。これは、DAKという薬剤師会の試験所を中心とした集団としてまとまっている。スウェーデン、オランダなどでも薬剤師(会)立の製剤所を持っている。

こうした製剤は医療で用いられる基本的な薬剤で規格書に収載されているものが多かったので、ガレヌス製剤あるいはジェネリック製剤と呼ばれている。

一方、その国にとって重要とされる薬剤ではあるが、その国の製薬会社が採算に合わないため、製造、輸入しないという薬(オーファン・ドラッグなどと呼ぶ)がある。薬局の薬剤師が、それでは困ると、個々で原料を輸入し、品質を試験した上で使うというのは、費用がかかりすぎる。こうした場合も、薬剤師達は協同してその薬、もしくはその原料を輸入し、この試験所で試験した上で薬局に供給する。薬局ではそれを製剤するなどして、医療の需要に応じることになる。といった具合に、試験所を中心として活発に活動している国も多い。

B 薬局製剤の医薬品価格牽制効果

この薬局製剤で、特に強調しなければならないのは、商標品(ブランドを付けた製薬会社の製品)に対する価格の大きな牽制効果である。薬局製剤は薬価令によって原料代に製剤手数料を付加するという形で製剤の価格が決められるため、一般に製薬会社の製剤の価格と比較するとかなり廉価である。

薬価の公定されている国(わが国の薬価基準でも言えることであるが)では正常な価格の競争が起き難くなって、市場機能が働かなくなり、薬剤価格が硬直化しやすいと言われる。製薬会社は、できるだけ競争を回避しようとする。しかし、薬局製剤の品揃えが豊富であると、製薬会社はいつも薬局製剤を競争相手と意識して、薬局製剤を念頭において、それに牽制されながら製剤品の価格決定をしなければならないことになる。

全国同一の薬価公定制を敷いているにもかかわらず、ここで価格競争が誘発されるのである。これで、薬剤師が積極的に薬剤価格の引き下げに貢献していると評価されている。それがどの程度のものか例をあげよう(185頁6・1参照)。

わが国では、錠剤など製剤は始めから製薬工業によって市場に出されたため、薬局は製剤と無関係と考えられている。ヨーロッパでは今でも基準薬剤(薬局方収載の製剤など)は薬局の作る製剤の方を本筋としている国もある。薬剤師は自製した薬局製剤を、医師や消費者に薦めるし、消費者も自分の調剤を頼んでいる薬剤師の、自分で作る薬局製剤を信頼してそれを選ぶことになったのである。わが国にも、同等品(ぞろ品)メーカーが存在するが、薬局製剤とはかなり印象が違うようである。

また、わが国では、薬局が製剤しなかったため、そもそも製剤というものは高価であると信じ込まれてきた。このため、健康保険で製剤を使用する習慣がついたのは昭和四十年代になってからのことである。今でも散剤など調合剤の利用率が極めて高い。今になってみると、これは、急速に人件費の高くなったわが国で、薬物治療の費用が安くならない大きな原因の一つとなっている。

(三)包装方法の改良 −−薬袋に入れない調剤薬−−

わが国では、(外来)医療で使われる薬は薬袋と呼ばれる封筒にいれて患者に渡される。病院でもらう薬、薬局で調剤してもらう薬は、皆封筒に入っている(または瓶入りである)。箱詰に包装されているのは薬局で売っている、風邪薬やビタミン剤である。錠剤やカプセルを薬袋に入れることは処方薬の権威を増すとでも考えられているのだろうか、誰もが不思議としない。

A 標準包装

ところが、ヨーロッパの薬剤師達は、変化が多い入院患者の調剤は別扱いとするにしても、外来患者の薬物治療では、この作業が薬局業務の効率化を妨げているとして、改善に着手したものである。つまり、錠剤・カプセルなどへの製剤化が「用法の標準化」であるとすれば、投与量(用量)の標準化も同時に行なったのである。

たとえば、戦後、抗生物質が使われ始めた頃、相当数の医師は、用法の標準化に慣れなかった。したがって、一カプセル二五〇ミリグラムの製剤なのに、一、一五〇ミリグラム与えたいとか、一、三五〇ミリグラムを処方したいという要求は少なくなかったものである。しかし、現在ではほとんどの医師が、一、〇〇〇ミリグラム、一、二五〇ミリグラム、一、五〇〇ミリグラム、という段階的な処方に慣れてしまっている。これが用法の標準化である。

投与量の標準化とは、製剤を箱詰包装として「既包装製剤」として患者に渡すことである。同じ薬に二〇錠、五〇錠、一〇〇錠入りと数種類の包装の製剤を用意して置き、処方はその量を単位として書かれ、薬局で渡される。

これが標準化包装品である。現在、ヨーロッパのほとんどの国では、外来の薬物治療の九〇パーセント以上(スウェーデンでは九五パーセント以上といっている)が、この標準包装品によって占められている。(次頁B 標準包装の再検討参照)

わが国の硬直化した発想では、高血圧の患者さんに、サイアザイド一〇〇錠入りを二箱与えるという感覚はない。二週間先の、次の診察日までの薬を渡すことを健康保険から要求されるわが国の常識からすると、これは誠におかしな話である。適切な診療間隔(次の検査診察日)を設定して、それまでに十分な薬を処方するというのである。標準化による効率の向上を目指したヨーロッパでは、用法だけでなく、投与量までも標準化してしまった。

多少薬が余っても気にしないのである。薬代よりも、人件費など総合的に考えて、効率的な方を選ぶのが当り前との発想なのである。

標準包装品利用の第一の利点は、調剤過誤の減少である。錠剤などの製剤を取り出して数え、それを薬袋に入れる場合に、薬品名や含量を誤認する過誤が少なくない。

第二の利点は、作業の単純化と能率化により、作業効率を改善し薬剤費を節約することが出来ることである。われわれから見ると、錠剤を数え、袋詰めにする作業は、たいしたことではないように感じる。ところが実際にヨーロッパの薬局での作業を見ていると、薬袋に入れる作業がないため、実に手早く作業が進んでいる。これだけの違いで、大変な能率化につながっているのである。技術的な問題を別にしても、わが国で行なった場合、この措置だけで外来の薬物治療の総費用を、十分の一程度を節約できると思われるほどのことである。

わが国の場合、薬剤の費用(病院薬局の経費など)は医療費の中に埋没しているので、非能率を改善する動きが明確に浮き彫りにされない。元来、大きな無駄はすぐ目立つので直されるが、ちょっとした非能率はなかなか改善されないものである。そしてこうした、ちょっとした無駄が重なり合って、全体として大きな無駄となっていることが多いものである。こうした点に目を配る責任者が必要であるが、これもまた、わが国の薬剤供給の歴史の浅いことにつながっている。ヨーロッパの場合、薬剤供給制度(医療分業)が別建てとして、医療の費用と区別されるため、小さな「あら」が目立つとともに、改善もやりやすいようである。

B 標準包装の再検討 −−通院間隔の適正化−−

西ドイツでは一九八一年からこの標準包装を、さらに合理的に再編した。薬剤師会、診療医師会、健康保険連合会、製薬会社連合会が話し合って、約七十の薬効区分の既包装薬剤をN1からN3まで、標準の単位(入れ目、錠数)に三区分することに合意したのである。

N1実験的な、短期間の患者の治療に用いるもの
N2中間的な経過期間の患者の治療に用いるもの
N3慢性病の治療期間の患者の治療に用いるもの

N1包装は通常二十錠程度の包装である。慢性疾患の薬物治療の手始めに(トライアル)として、もしくは抗生物質など、急性疾患の短期間の治療に用いる。N2は五十錠程度で、中間的な様子を見る期間に用い、慢性疾患の(症状の安定した)治療は百錠ほどのN3を用いる。抗生物質など、急性疾患で用いられる薬は、小包装にシフトさせ、慢性疾患については、症状が安定してくるにしたがって大包装に移行させようというのである。医師は通常、N3包装を一ないし三個処方するという。(写真6・2)

したがって、同じ薬でもN1包装とN2、N3では単価が違っている。これもわが国の薬価基準の常識からすると、おかしなことに映るが、むしろわれわれの方がおかしいのかも知れない。

わが国では、薬の無駄使いが保険財政の赤字につながるとして、薬はなるべく少量ずつ患者に与えるものとされている。しかし、高齢社会の慢性疾患の増大に対処するには、在宅医療の重視にみられるように、通院間隔を適切に設定して通院回数を減少させることが大きな課題となる。症状の安定した患者に対して、医師は次の検査までの二〜三ヵ月間は自宅で薬物治療させるのである。薬だけで通院することはない。医薬品の製剤化によって医薬品の保存性が改善され、経時変化を考慮しなくてすむようになったことと、その間の服薬について地域の薬局薬剤師が助力するのである。

(四)薬局の設備基準

こうして、今世紀の始め、薬剤師は薬局での製剤を含んだ調剤を行なっていたので、薬局の構造設備の基準はかなり大規模で、充実したものになった。西ドイツでは百十平方メートル(わが国では約二十平方メートル)を最小面積とし、製剤、試験設備も加えて、薬剤供給の質の向上を計っている。しかし、前節で指摘したように、製剤技術の急速な水準向上などによって、われわれの目からみると、個々の薬局の製剤と試験は、何か空洞化し、時代遅れの印象がある。

反面、製薬企業での品質管理(GMPと呼ばれる自主基準)の実施により水準が向上した。それに伴って、薬が消費者に渡るまで、同じレベルの管理をすることが求められている。製薬会社と同じレベルの管理をしろというのである。薬剤師側の認識も深くなっている。つまり、薬局でも製薬会社と同じ厳しさの衛生、品質管理を行うのが望ましかろうという反省である。つまり、薬局でも製薬会社と同じ厳しさの衛生、品質管理を行うのが望ましかろうという反省である。こうした観点から、薬局製剤の設備も製薬会社と同じレベルのGMPを持つことが真剣に考えられている。その結果、猶予期間はあっても、製剤施設の集約化が進むものと予想され、各国でその対策を模索している。

同時に、薬剤師の行なっている薬局での集中管理を、今の時代にそぐわないものであるとし、製薬会社のGMPのみで品質の管理は十分ではないかと、消費者の便宜を主張する動きもあるようだ。自動販売機やその他のチャネルによる薬の供給を許さないのは消費者の利益に反するという見方である。

ヨーロッパの薬剤師にとってこうした動きは過去に何度も経験したものなので、現在でも薬剤師の集中管理は経済的な効率においても揺るがないと主張すると共に、品質面の管理も製薬会社のみでは不十分と実証するために、薬局での試験・検査にかなり気を配っているようである。

(五)薬剤師の教育研修

新医薬品の開発と、それらを含めた医薬品などの化学物質の社会での管理とは、自ら異なった学問領域を形成する。こうして薬学は大きく二つに分化を始める。

一つは言うまでもなく、新医薬品の開発である。しかし、この分野はむしろ薬学ばかりでなく、有機化学、生物学、農学などの領域の人々も算入して、しのぎを削ることとなる。むしろ、この面での薬学は、創製された物質を安全に医薬品として人間に適用できるか、もしくは適用できる形に仕上げることに焦点が向いているように見える。

第二は、医薬品の人々への応用である。その国に住む全ての人々へ、安全で有効な薬を、どこに住む人にも、いつでもかつ効率的に提供するに足るシステムを構成し、その運営を図ることである。

この二つの分野は米国では、はっきりと区別されるようになったが、ヨーロッパでも次第に分かれる傾向にある。

また、学部の修業年限も短くはないが、学部卒業だけでは近年の医学などの進歩に追随できないと、薬理検査などの卒後教育のカリキュラムを作成して実行している国もある。

A 助手の法制化

製剤の汎用によってルーチン作業を単純化することに成功した薬剤師は、薬局の部分部分の作業を助手に任せている。調合まで助手の仕事としている国も多い。現在のヨーロッパでは、薬剤師は助手の養成を法制化して、かなり広範に使っている。スウェーデンでは二階級の助手(調合士と薬局助手)を定めている。

薬剤師はもちろん調剤もするが、もっぱら管理者の立場である。前にも述べたが、ただその薬局の管理者ではなく、その国の薬剤供給の管理者の一員である。一方、医学・薬学の進歩とも絡んで、薬剤師の教育年限は次第に長くなっている。薬剤師の立場は自らテクニシャンではなくなっているし、給料も高い。

したがって、助手の利用は、その国全体の薬剤供給費の節約の面で、大きく貢献しているという。薬剤師達は自分自身の生涯教育にも熱心であるが、薬局助手の育成、研修にもかなりの努力を払っている。多くの国の薬剤師会は、そのための教育施設を維持または助成している。

ヨーロッパでは、わが国のような中途半端な薬剤師の養成をすることは、薬剤供給の費用の面からしても、考えられないようである。



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