第四章
第六節 付 大憲章 −−一二四○年布令−−
ここで、薬剤師の大憲章と呼ばれている皇帝の書の抜粋をあげてみよう。
薬の供給が、医師から独立して、直接、政府の監督を受ける職業となり、制度として初めて形作られたのは、一二四〇年のことである。医師と共に、薬剤師を明確な職業人として区別し、互いに職務上の利害関係を持つことを禁じた。また、薬剤師に学識と熟練、責任を持つことを要求した。
これは神聖ローマ帝国皇帝のフリードリッヒ?世(一一九四〜一二五○年)がシチリアで、皇帝の書として発布した、中央集権的な行政を行なう基本法典の布令であった。その一部に、薬剤師にとってきわめて大きな意味を持つ部分のあることから、「薬剤師職業の大憲章」と呼ばれている。ただ薬剤師にとって重要な意味を持つだけでなく、医療についても、金もうけの手段から、保健サービスに格上げしたという大きな意味を持つとされている。
(一) 医師との協業禁止
ここで、その一部をあげてみよう。
第四十六条 開業の免許を持つ医師は、法の要求するすべてについて忠実に履行することを誓約しなければならない。加えて、医師はいかなる薬局でも通常の強度より劣る薬品を売ったことを知った場合にはこれを宮廷に報告し・・・・・
医師は薬局と関連のあるいかなる事業をも経営してはならないし、いかなる薬局をも彼の保護の下に置いてはならない。また薬局に関するいかなる金銭契約をも結んではならない。
薬剤師は法規に従い、自身の信用と責任に基づき、医師の認証を受けて事業を経営しなければならない。そして、全ての薬は誤魔化しなしに調製され、誓約することなしにこの製造品を売ってはならない。
薬剤師は販売によって、下記の利益を得るべきである。単味剤と複合剤で、以前に使用したことがあって、一年以上貯蔵する必要のないものは一オンスに付き三ターレルの割合で支払いを受ける。
薬剤を調製する薬局はどこにでも位置してはならず、下記の(略)王領の特定の部落に限る。
(二) 薬局監督官の役割
薬局と薬剤師だけでなく、薬局監督官を定めている。
第四十七条 わが威令の行き届いている王領の全ての県において、氏名を宮廷に報告される、慎重で信頼の出来る二人の者が、公式の誓約によって任命され、契約されることを布告する。この者の監督の下に、舐剤、シロップ剤その他の薬剤が法にしたがって調製され、こうした監督を受けたのちに売られる。(特にサレルモにおいては、この監督資格は物理学博士の称号を・・・・)
また、医療目的の植物栽培者は彼らの技術にしたがって、また可能なかぎり、監督者の面前で薬を良心的に調製することを、正式に誓約して契約されることを布告する。
この法の違反者は処罰され、動産を没収される。しかしながら、この法の忠実な運用の義務を委任されている監督者は、彼らに委任されている事柄について、いかなる誤魔化しをも許すことがあった場合には、死刑を宣告されるべきである。
(History of Pharmacy; Kremers & Udgang 一九六三年)