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解説 世界一の開局薬剤師
ライ症候群とテレビ(5,2)
FDAのパンフレットより
薬事日報;1983:12


中途半端な報道恐怖心を煽り立てる?
 先日の夕方、テレビを点けたら、6時の「テレポ-ト6(東京放送系)」が始まっており、鎮痛剤の話の途中であった。はじめは何のことやら見当もつかなかったが、「ライ」で亡くなった患者のお母さんが画面に現われたので、ライ症候群のキャンペ-ンなのかと合点した。
 ところが、解熱・鎮痛剤がどのように危険かについて小動物の消化管出血の例を、日大歯学部とか、田村豊幸先生のお話などを交えて話が進み、ちっとも「ライ」の話に戻ってこない。そしてそのうち、以下次号で終わってしまった。
 なんとも中途半端で、おかしな話であった。薬の危険といえば、どんなことでもニュ-スになるのであろうか。多分、真面目に観た人は、解熱・鎮痛剤があぶない、危険だ、ということしか感じないのではあるまいか。これでは「ライ」を防ぐことにはなるまい。
 ご承知のように、ライ(Reye)症候群は、(1)サリチル酸誘導体の摂取によって、(2)16歳までの小児の、(3)流感、みずぼうそうなどの、ウィルス性疾患の後期に発症するのではないか、と疑われている。発症後の経過が劇的、かつ重症なので、特に注意するように勧告されているものである。
 本当に消費者の安全を考えたら、いたずらに解熱・鎮痛剤が安全でないなどと恐怖心を煽り立てることより、前記の場合にサリチル酸誘導体を使わないよう、繰り返し訴えた方が良かろう。
 テレビの話の進め方をみていると、消費者の安全よりも恐怖心に重点を置き、テレビは消費者の味方との自己宣伝をしているようにみえる。
 さらに、サリチル酸誘導体は解熱・鎮痛剤だけに含まれるものでなく、パップ剤や、チュ-インガムに(冬緑油として)含まれ、それが原因となる恐れも否定できなかろうから、ただ解熱・鎮痛剤の問題ではなさそうである。
 解熱・鎮痛剤の消化管出血と、ライ症候群が、どこで結び付くのだろうか。ただ解熱・鎮痛剤が危険な薬で、その例として双方を取り上げたという論法ならば、いかにも無理なこじつけで、消費者の恐怖心を刺激することだけを意図した感情論でしかなかろう。
 さて、テレビの批判ばかりしてはおられない。サリチル酸誘導体を扱っているわれわれは、消費者に対して、ライ症候群について、何をせねばならないのか、何をすべきなのだろうか。
 昨年(1982年)秋に、米国のFDAから通知を貰った。それはライ症候群について主として小児科医、薬剤師などを対象とした警告であったが、こういう場合の対処の方法の参考として挙げてみた。(1982年開局薬学研究会11月例会資料)。

FDAよりの通知
 1982年10月8日
 既にご存知のことですが、保健局長のリチャ-ド・S・シュワイカ-は、アスピリンと他のサリチレ-ト含有製品の、両親に対してReye症候群は16歳以下の流感(Flu)もしくはみずぼうそう(Chickenpox)の小児のアスピリン使用と関連しているであろうことを、知らせる注意書の提案をアナウンスしました。
 私は、これは慎重な行動であると、考えます。Reye(ライ)症候群は、まれにしか起こりませんが、それは致命的となり得ます。約600から1200例が毎年5歳から16歳までの小児で起きています。20〜30%が死亡し、他の多くが永続(久)的脳障害となります。
 たとえ、Reye症候群の原因について未だに知られないことが多くあるとはいえ、研究者たちは数年間、この状態の発症とウイルス性疾患治療のための普通のサリチレ-トの使用との間に、何らかの関連性があるのではないかと疑いを持っています。
 アリゾナ州、ミシガン州、オハイオ州の保健当局によるケイス・コントロ-ル調査はこれらの薬剤の使用が対照よりもReye症候群を起こした16歳以下の患者で共通したとの証拠を得ています。アメリカ小児科アカデミ-と米国公衆衛生局は既にウイルス性疾患へのサリチレ-トの安易な使用に対して警告しました。
 現在私は貴方が親たちに何時なりとも、16歳以下の小児の流感やみずぼうそうの治療にサリチレ-ト、サリチレ-ト含有製剤を与える際に注意をするよう勧告することを強く主張せねばなりません。
 多くの親達はReye症候群についてより多くを知りたがっているので、われわれはやさしい言葉のパンフレットを用意しました。それが彼らの質問に貴方が答える補足として使われることを望みます。一部を同封しました。
 ライ症候群は、幼児から10代後半の小児の流感やみずぼうそうに引き続いておこる可能性のある急性の症状です。ウイルス性疾患の回復期にしばしば小児に突然の嘔吐、激しい頭痛といった異常反応が現れるのが特徴です。すみやかな診断と救急治療の行える病院への入院が必要です。ライ症候群は、極めて「まれ」なことですが、起きた場合には命にかかわることになります。
 Q1  流感やみずぼうそうの小児にアスピリンを与えることは問題ですか。
 A1  アスピリンを服用している16歳以下の小児と、ライ症候群との間になにか関連があると思われます。アリゾナ、ミシガン、オハイオの州保健衛生局はこのようなライ症候群についての研究を行いました。
 Q2  それは、アスピリンがライ症候群を引き起す、ということですか。
 A2  この研究によるとアスピリンとライ症候群の間には関係があるようです。米国公衆衛生局からけんもん諮問された専門家たちは、この症状とアスピリンとの明らかな関係は無視できないという点で一致しています。そのために、FDA公衆衛生局は、アスピリン、他のサリチル酸誘導体や、アスピリンを含む医薬品が流感、みずぼうそうや他の類似症状を伴う16歳以下の小児に投与する時は注意する旨「表示」するよう要求しています。米国小児科学会は、独自にこうした患者へのアスピリン投与をひかえるよう勧告しています。
 Q3  サリチル酸誘導体とは。
 A3  サリチル酸誘導体は、鎮痛、解熱、消炎の治療に用いられる化合物です。サリチル酸誘導体を含む製剤はぬり薬(日本ではパップ剤)のような外用鎮痛剤にも使われます。
 Q4  小児の流感の症状に対してはアスピリンを与えるべきではないのですか。
 A4  公衆衛生局長官Dr.C.E.Keepと米国小児科学会はこうした症状にアスピリンを与えることの危険性を警告しています。Dr.C.E.Keepは小児の病気は、治療せずに治ってしまうほど軽く、重症にはならないのが普通だと指摘しています。ほとんどの場合小児ウイルス性疾患にアスピリンを与えることは賢明ではなく、むしろ不必要なことのほうが多いようです。かかりつけの医師がいつアスピリンが必要かを決める最もふさわしい人です。
 Q5  それではアスピリンやその他のサリチル酸誘導体は小児にとってすべて禁忌なのですか。
 A5  医師の助言を受けなさい。そのような薬を使わなければならない時があります。例えばリウマチ熱やリウマチ性関節炎には、アスピリンは推奨されますし、単純な痛みにも同様です。しかし、インフルエンザやインフルエンザ類似のウイルス性疾患では、まず医師に問い合わせてから与えることが必要です。
 Q6  ライ症候群は新しい病気ですか。
 A6  いいえ、新しい病気ではありません。はやくも1925年には、これは脳部炎症と思われていました。1963年にオ-ストラリアの病理学者が“Reye"と名づけ、彼は通常死にいたるような肝機能障害と、血液の化学的な異常が組み合わさった脳の浮腫として、より精密な記載をしています。これは一つの症状ではありませんが、症状と徴候とのコンビネ-ションという意味では『症候群』です。
 Q7  ライ症候群はインフルエンザと関連があるようですが、なにか季節的なパタ-ンはありますか。
 A7  その通り、インフルエンザ流行期と言われる10月〜3月に最も多く発現し、インフルエンザ流行を報告している州に群発しています。
 Q8  ライ症候を起こしそうな小児インフルエンザ患者はどんな徴候を示しますか。
 A8  その徴候は、通常小児がインフルエンザからなおりかけた時に現われます。最初の徴候は持続性の嘔吐です。小児は睡眠または昏睡状態ですか、反応はあります。半日以内に小児は見当意識を失い、攻撃的になり、うわ事を言い出します。もしなにも処置をしないと、昏睡を経て死亡します。
 Q9  ライ症候群の患者に自宅での処置は可能ですか。
 A9  いいえ、ライ症候群は医学的に緊急事態です。ライ症候群を起こしそうな徴候を示した小児患者は、速やかに病院へ運ばなければなりません。そこで必要な治療がなされます。例えば血液と体液のモニタ-と補給、呼吸が停止しかかれば人口呼吸装置の使用、あるいは必要なら外科手術により脳圧を下げます。
 Q10  ライ症候群に対する治療期間はどのくらいですか。
 A10  普通入院は3〜10日です。患者は十分に監視され、集中管理室に置くことが好ましいでしょう。患者は血液化学、呼吸や他の徴候が48時間安定すると危機を脱したとされます。この安定状態になるために要する日数は一定でなく、3日のことも10日のこともあります。
 Q11  ライ症候群の原因は発見されましたか。
 A11  いいえ、公衆衛生局や他の国中の研究機関が調査していますが、まだ原因は解っていません。一般的なウイルス性疾患の併発症として、極めて小数の患者のみがかかり、非常に多くの患者はこの症状を示しません。なぜこれら少数の小児が感染しやすいかはだれもわかりません。

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