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解説 世界一の開局薬剤師
コンピュ-タを利用した製剤検索システム(2,2,3)
水野睦郎・山本信夫・武政文彦・原 悦雄・一瀬信介・大崎 卓(水野調剤薬局)
日本薬学会104 年会(仙台)
病院薬学部会;1984


はじめに
 開局薬局でも製剤識別の要求がありますが、その理由が医師に内緒で同じ薬を買いたいことであったり、最近、次第に着色製剤の色が淡くなる、または白色化しているため、外見からの区別がつけ難くなった結果、薬剤師として責任ある回答ができかねるようになったことから積極的に取り組まずに来ました。
 しかし、薬剤アレルギ-や副作用が現れたり、自殺を含む中毒など、その患者の安全にかかわる場合に、直ちに製剤を識別して適切な対応をするのは開局薬剤師の大切な役割の一つでありましょう。さらに、我々が開発し使用している調剤向けコンピュ-タシステムAPO-Sでは、その患者に対して既に調剤して、その時点で服用している薬剤を、システム内部で検索して、これから調剤しようとする薬剤と照合して相互作用がある場合には、薬剤師に警告を行っています。
 この際に、患者の安全を守る目的で患者に対して他剤との併用の有無を質問することとしており、患者から、他の医療機関で与えられた製剤を示されることがあります。ヒ-トシ-ルの耳を、わざわざ切り取って投薬することの多い現状では、薬剤師の問い合わせにこころよく答えてくれないこともあります。
 こういった場合に、識別コ-ドの有無にかかわらず、薬剤師は製剤識別の努力をなおざりにするわけにはいきません。そこで我々はコンピュ-タを利用し、コンピュ-タの処理速度が速い、記憶が正確で取りこぼしがない、自由にプログラムの組み変えができるといった利点を十分に活用した、有用な製剤識別システムの構成が可能かどうかについて実験を行いましたので報告します。
コンピュ-タによる検索の特性
 実験は手作業と違った、コンピュ-タの特色を生かそうと努めました。手作業の検索では、定められた手順に従って検索し、手順を飛ばしたり、逆にするわけにはいきません。
 例えば、薬効分類を用いて、『フェノバルビタ-ル』を検索することはできますが、この分類を用いて、バルビツ-ル酸含有製剤を検索するのは無理があります。図1は、この様子を模式化したものです。全体を包み込む集合を中枢神経系薬とすれば、斜線の部分でフェノバルビタ-ルが検索されます。しかし、バルビツ-ル酸誘導体は、これだけに分類されず、図1の矢印で示す場所にも散剤しているので、バルビツ-ル酸全体をつかもうとする場合には、新しい分類法によって分類し直す必要があります。
 一方、コンピュ-タを利用する場合、こうした手掛りの項目をキ-と呼ぶこととしますと、論文検索などでつかわれているように、いくつかの項目をキ-としたデ-タを作っておくことにより、そのうちいくつかのキ-を選び自由に組み合せて検索することが可能です。

キ-の設定
 こうしたコンピュ-タの検索に適したキ-の性格として
1) すべての製剤で容易に得られるもの。
2) 境界(区切り)がはっきりしているもの。
(理由)隣へまぎれこんだら検索できない。
3) 独立して、他のキ-に従属しないもの。
(理由)キ-としての意味がない。
4)個人差が出にくいもの。
(理由)他の区分にまぎれこむ。測定誤差、製剤の味など。
5) コンピュ-タの特性に合ったもの。
(現状では、コンピュ-タはパタ-ン認識に弱いので。)
の諸点を考慮に入れて、キ-を選びました。選ばれたキ-は、薬剤師が容易に判定、測定のできる、製剤の外見、大きさ、色、形状などに加えて、直接の被包の種別、色、透明度、などとなりました。
 これらのキ-は、人力での検索には分類がおおざっぱ過ぎるように思えますが、コンピュ-タを用いた場合には、図2の左側に見られるように、かなりうまく絞り込める筈であると予測して実験を進めました。
 実験は、検索用製剤ファイルを新たに作成し、コンピュ-タに記憶させ、それを用いて検索することとしました。その検索用製剤ファイルは1つの製剤が表1に示す25項目で構成されています。表1は、デ-タ入力画面で入力プログラムを動かすと、この画面が現れ、入力作業ができます。サンプルとして、当薬局における繁用品目の錠剤、カプセル、合わせて120品目を入力しました。現在ではそれらの製剤の経時的な変更も追加したために、延べ製剤数は、368品目となっています。(このプログラムは、コボルを用い、約700ステップ10KB程の大きさで、APO-Sのホスト・コンピュ-タであるN.C.R.I-8270で稼動中です。)
 検索プログラムは9つのキ-を入力することができます。製剤が裸の状態で持込まれた場合は、被包について知ることができませんので0を入力します。(このプログラムも入力プログラム同様コボルで書かれ、大きさも同程度です。)

キ-の説明
 主なキ-を説明すると、
1) 剤型キ-
錠剤とカプセルの2種に分けました。
2) 大きさキ-
錠剤では短経、カプセルではボディ-の直径を、簡単なノギスを用いて測定します。8.0mmと入力すると、検索プログラムは上下0.2mmの巾を計算し、7.8mmから8.2mmとして登録された製剤を検索して、測定誤差による検索もれのないように配慮しています。表2は入力された錠剤の大きさの分布を示しています。
3) 色調キ-
表3のように8種類に分類しました。錠剤鑑別辞典のように75種にも、細かく分けると、隣りにまぎれ込んで検索できないこともあるので、ノイズの入ることは覚悟で、大ざっぱな分け方をしてあります。
4) 形状キ-
表4に示したのは錠剤で、カプセル剤はいわゆる『長円カプセル』と『球形』、『その他』とし、これもおおまかな分類としてあります。
5) 剤皮キ-
表5は錠剤の場合で、カプセルは『硬カプセル』、『軟カプセル』とそれらの透明、不透明の別と『その他』に分けてあります。

結果
 サンプル120品目の中から、任意の製剤を選んで、実際に検索プログラムを動かしてみた所、かなりの場合、特に色の付いた製剤の場合にはユニ-クに決められました。最も悪い条件と考えられる、白色、割線有り裸錠、直径9.0〜9.5mmの場合の絞られ方を表6に示しました。95品目の錠剤が3製剤に絞られています。表7は、この場合の画面を表わしています。キ-はキ-・ナンバ-1,3,4,6,7の項目に設定し、あとは入力してありません。コンピュ-タは、すべてのレコ-ドを検索して該当する製剤を選び出します。直径は先に述べたように0.2mmのアロ-ワンスを持つので、9.1〜9.5mmまでの該当する製剤を抽出します。この表7に示す画面から、さらに3種類の製剤について、味を確かめられれば、テオコリンを、被包の状態が解れば、ザイロリックを知ることが出来ます。また識別コ-ドを持つ製剤の場合には、画面の右端に“I"が表示されます。画面の左端の、製剤に付けられた番号を入力すると識別コ-ドを表7に示す画面の下部に確認のため表示させることができます。表7はザイロリックの場合を表しています。さらに、製剤の薬効分類番号も表示されているので、ある場合には、患者との応対の資料として利用できます。

今後の問題点
 こうして我々の場合には、満足する結果が得られました。しかし、サンプルの数が120品目と、極めて少なく、数千の製剤を入力した場合を推しはかることは難しいので、さらにサンプル数を増やし、検討を加える必要があると思われますが、これまで、薬剤師の経験、人手による検索では困難であった、製剤の外見、被包をキ-とした検索に、コンピュ-タの利用によりかなり有用な検索システムが構成できるのではないかと考えられます。
 さらに、この実験で2つの問題点を見い出しました。
 第一に、検索に2分程度の時間がかかるので、検索プログラムに工夫を加える必要のあること。
 第二に、検索用製剤ファイルの入力を行った際に我々の実験の測定、判定と鑑別事典のデ-タでは、食い違いが目につきました。我々が選んだ120品目について、鑑別事典によって過去10年間の変化の様子を調べたところ、表8に示すような結果が得られました。こうしたことから、
1)識別コ-ドを含む製剤の諸元に変更が多く、また古い薬を誤って飲んだなどの場合を考えると、古いデ-タと言えども捨てるわけにはいかず、デ-タの数が膨大となります。
 我々の場合でも、10年間の変化件数はサンプル件数の約3倍にも達していることから、きわめて単純な試算ですが、製剤数を7,000品目とすれば、10年間で21,000品目、年間およそ1,400品目もの変更が起ることにもなります。製剤自体や被包にしばしば変更のあることは感じていましたが、これだけ変更が多いとシステムとして完全なデ-タメインテナンスが行なえず、システム化しにくいのではないか?
2)識別コ-ドが容易に変更されるため、製剤を同定する際の障害となる。
3)現状のように視覚的な識別コ-ドは、コンピュ-タ向きなコ-ド付けとは思われない。
などといった問題点も明らかになりました。こうした問題を解決するためにも、メ-カ-を始め他の医薬品関係者の協力によって、コンピュ-タの特性を十分に考慮した識別コ-ド付けが望まれます。
 最後に、今回の実験のためプログラムの作成を担当したサカエ調剤薬局 長内肇氏ならびに当薬局 田崎真知子氏に深く感謝いたします。

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