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株式会社 じほう
調剤と情報
別刷
平成14年7月
Vol.8 No.7
P93〜P99

SOAP的情報整理術―(4)
電話相談に上手に対応する

水野薬局 阿部 璃那
同    安部 好弘

はじめに

前回(本誌2002年6月号)では、カウンターで行う服薬指導業務にSOAP的な思考を取り入れるポイントを整理しました。今回は、その応用編として患者との電話相談に焦点を当ててみたいと思います。

当薬局には、毎日たくさんの電話相談が寄せられます。その内容は、薬物治療に関するものからクレーム的なものまで千差万別ですが、原則として(個人を指名された場合や研修目的を除き)ベテランの薬剤師が担当することにしています。薬剤師歴3年の筆者も、最近になって見習い的に電話相談を担当するようになりました。はじめは服薬指導業務と同じように対応すればよいものと考えていましたが、実際に担当をしてみるとカウンター業務とは違った難しさを感じています。

電話というごく日常的な道具を使うことが、なぜこんなに厄介なのでしょう。電話というコミュニケーション媒体の特徴をふまえ、相談や指導におけるSOAPの利用方法について考えてみたいと思います。

電話相談の重要性

地域薬局にとって、電話を利用した患者とのコミュニケーションはますます大切な業務になっていくものと考えています。まず、電話相談が重要になってくる社会的な背景について考えてみたいと思います。

1. 地域薬局は情報の発信源

地域薬局では、服薬指導や薬剤情報提供など、医薬品の適正使用に必要な情報活動に取り組んでいます。薬剤師法25条の2が施行されてから数年しか経っていませんが、これらの情報活動は着実にレベルアップしていると思います。これからも、医療(薬物治療)におけるインフォームドコンセントの要求がますます高まり、地域薬剤師に対してより積極的な情報活動が求められるものと予想できます。

当薬局の場合、有害作用を未然に防ぐ目的で、重篤な副作用の前駆症状や相互作用情報などの文書を提供しはじめてから、電話による報告や相談の件数が急増しました。

今後、地域薬局は、より踏み込んだ情報提供をするようになるでしょう。そうなると、問題や疑問を持った患者は、真っ先に情報の発信源である地域薬局に連絡や質問をすることになると思います。

2. 地域薬局のモニタリング機能

2002年4月より、保険医療における投薬日数の制限が見直され、慢性疾患に対する長期投薬の範囲が大幅に広がりました。地域薬局には、長期投薬の安全性と有効性を高めるために必要なモニタリングの役割を担うことが、今まで以上に期待されています。すでに、調剤報酬上も幅広いフィーが設定されるなど、その役割をバックアップする社会的環境も用意されています。

欧米にみられる処方せんのリフィル(反復使用)制度では、電話によるモニタリングがうまく利用されているようです。電話は、患者にとって最も気軽で手近な報告や相談の手段ですから、処方の長期化に伴い電話相談の需要が伸びるものと考えられます。

電話相談(指導)の難しさ

1. 会話だけのコミュニケーションがもたらす限界

人と人とのコミュニケーションは、その半分以上が言葉以外の要素(五感や第六感など)によるものだといわれています。電話相談は、言葉によるコミュニケーションに限定されますので、情報の収集(S、O)や指導説明の実行(P)という点で、その品質と効率が低下しやすくなります。相手の様子を伺い知ることができるカウンター業務と比べて、はじめから大きなマイナス要素があると考える必要がありそうです。ただし、指導や相談の結果が、患者のQOLや薬物治療の成否を左右することは、カウンター業務と変わりありません。不適切な対応をすれば、患者の抱えている不安や不満を解消するどころか、不信感を与えてしまうことになります。電話によるコミュニケーションを適切に行うために、電話相談の持つ特性や難しさを表1に整理しました。

2. 当薬局での対応策

当薬局では、患者からの電話相談を事務職員が受け、大まかな内容を聞いた上で担当の薬剤師が折り返し電話をすることを原則(急を要する要件を除く)としています。二度手間で不親切な対応にも見えますが、電話特有のマイナス要因を埋めるためには有効な方法のようです。受付で得られた情報は、後述する3枚複写の用紙に記載され、担当の薬剤師に渡されます。相談を担当する薬剤師は、受付文書から相談内容の概略を把握し、対応に必要な情報と時間を事前に準備することができます。薬剤師の頭の中で、論理的なプロセスに基づいてインタビュー内容や指導に対するイメージができますので、電話で起こりがちな一方通行的な対応に陥ることもなくなります。また、薬剤師の意識も、患者が抱えている問題を積極的に抽出して解決するという目的を持って電話をかけることができますので、電話相談の質を維持することにつながっています。

電話指導(相談)におけるSOAP

電話を利用した指導相談においても、薬剤師が問題を明確化し、論理的なプロセス(SOAP)を経て問題解決をすることに変わりありません。むしろ、重要な問題が埋もれたり、情報不足になりやすい電話相談だからこそ、より論理的なプロセスを踏まえることが必要になります。薬剤師側に問題解決の意識と能力が不足すると、一問一答的なQ&Aの対応になってしまいます。これでは、患者の質問に答えられても、患者のQOLを向上させるというゴールに達することはできません。

以下に示した電話相談の事例で、Q&A的な対応と積極的に問題抽出からゴールに至る対応を比較してみましょう。

1. 事例―以前もらった坐薬はまだ使えますか

ある日、事務受付から電話相談の連絡表を受けとりました(図)。

(1) 患者情報、薬歴情報

氏名:東京花子(仮名)
年齢:3歳
性別:女性
アレルギー歴:なし
副作用歴:なし
併用薬:なし
既往症:特別な疾患なし、感冒(2002年2月20日)

(2) 調剤履歴

【3ヵ月前の処方薬】
処方日、2002年2月20日
ヒベンズ酸チペピジンシロップ 6mL
塩酸ブロムヘキシンシロップ 5mL
塩酸シプロヘプタジンシロップ 4mL
分3毎食後 4日分
アセトアミノフェン坐薬100mg 3個
38.5度以上の時 1回1個

2. 電話相談の内容

薬剤師:もしもし、水野薬局の薬剤師、阿部と申しますが、東京花子さんのお宅ですか。
患 者:はい、東京です。
薬剤師:折り返しの電話になり申し訳ございませんでした。お電話をいただいた件についてお話をさせていただきたいのですが、よろしいでしょうか?
患 者:お願いします。
薬剤師:3ヵ月前にお渡しした坐薬を使えるかというご質問でしたね。
患 者:ええ、昨日から微熱があって、さっき計ったら37.5度でした。夜に熱があがったらどうしようかと思いまして。前にいただいた坐薬は悪くなっていないかしら?

以下、電話相談の続きは「Q&A的対応」と「積極的な問題抽出」に分かれます。

(1)対応その1―Q&A的対応

電話相談の内容から、薬剤師は坐薬の品質を「問題(Problem)」として取り上げ、対応しました。


薬剤師:保存はどのようになさっていました?
患 者:薬の袋に書いてある通り冷蔵庫に入れてあります。
薬剤師:3ヵ月前にお渡しした薬は3年の使用期限がある状態でお渡ししています。冷蔵庫に保存していれば3ヵ月で悪くなることはありません。汚れたり見た目が変わっていなければ使っても問題ないですよ。
患 者:この前は、熱があがらなかったので封を切っていませんけど。
薬剤師:それなら大丈夫ですね。
患 者:わかりました、どうもありがとうございます。

(2)対応その2―積極的な問題抽出

電話相談の内容から、薬剤師はその背景についても尋ねることにしました。
薬剤師:夜に熱があるのは心配ですね。発熱以外に何かお気づきになった症状はありませんか?
患 者:咳も鼻水も出ていませんが、熱のせいか食欲がありません。
薬剤師:そうですか、坐薬は清潔な状態で冷蔵庫に入れていれば3ヵ月で悪くなることはありませんが、解熱剤を使うかどうかは慎重に考えましょう。
患 者:前にお聞きしたように38.5度になったら入れればよいのですか?

この段階で、問題が坐薬の品質から坐薬使用の判断に変化しました。

薬剤師:今の段階では、なぜ熱がでているのかわかりませんので、体温だけを目安に坐薬を使うのはお勧めできません。自己判断で解熱剤を使うと、医師に診断を受ける時に熱の経過がわからなくなって診断の邪魔になってしまうこともあります。
患 者:熱が38.5度を超えると危ないんじゃないですか?
薬剤師:熱が高くて、ひきつけを起こした経験はありますか?
患 者:いえ、そういうことはありません。
薬剤師:熱による痙攣を起こしたことはないのですから、38.5度になったから危ないということはありません。熱は病気によって起きる反応ですから、それを下げたから病気が治るということはありません。慌てて坐薬を入れる必要はないでしょう。そのかわり2、3時間ごとに熱を計ってメモをとっておきましょう。食欲がないようでしたらなるべく水分をとるようにして脱水を起こさないようにしましょう。熱さまし用のシートなどを使ってなるべく熱を逃すようにしてあげてください。
患 者:わかりました。ただの風邪だと思うんですけどね。

この段階で、問題が坐薬の使用の判断から、重篤な疾病を見逃さないための行動に変化しました。


薬剤師:風邪のほかにもいろいろな原因で熱が上がることがありますので、熱の動き以外に、眼や口の中の充血や皮膚の様子に変化がないか、よく観察してください。
患 者:変化があったら病院に行ったほうがよいのですね。
薬剤師:38.5度以上の熱が長く続いたり、先ほど申し上げた症状があるようなら、小児科の医師に診てもらいましょう。

3. 事例をまとめてみましょう

事例2をSOAP形式でまとめてみると表2のようになります。

事例1は、薬剤師が患者さんの質問に対して、直接的な回答をしています。相談内容に対し丁寧に答えていますので、患者さんは満足してくれるかもしれません。しかし、花子さんのQOLを高めることにつながったとは考えられません。

一方、事例2は、薬剤師が質問の裏側に隠された問題を掘り出しています。その結果、母親に対して解熱剤の使用方法に関する知識を提供することができました。また、発熱が重篤な疾病(例えば、川崎病など)によるものである可能性も考慮し、その対応方法についてアドバイスをすることができました。

おわりに

筆者は、電話相談の難しさから苦手意識を感じていました。これまでは、経験を積めばベテラン薬剤師のように対応できるのだろうと漠然と考えていました。しかし、本稿をまとめるうちに、適切な電話相談を行うためには、薬剤師の目的意識(使命感)、判断や評価をするための知識(エビデンス)、情報を論理的に利用するための方法論(SOAP)、コミュニケーションスキル、相談を受けるための環境整備などの要素が必要であることを学ぶことができました。これを機会に、薬剤師としての土台となる要素を自分のものにして、より質の高いモニタリングサービスを提供できるようになりたいと考えています。

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