的確な服薬指導のための
薬歴の基本とその考え方
日本薬剤師研修センター監修
佐谷圭一 編著
1993年
P112〜P121
水野薬局
冨岡 正博
5-1●はじめに●
水野薬局では、患者情報を業務に取り入れて20年になる。1980年には即時検索などの諸問題を解決するためコンピュータシステム(APO-S)を開発し導入した。これにより、何時でも充実した患者情報が使えるようになり業務が改善された。このシステムを利用した業務内容については『薬歴の実際』(p.131〜138:薬業時報社)を参照していただきたい。
ここでは、水野薬局の情報に対する意識と20年間の情報を活用したうえでの経験を紹介する。
5-2●情報活動の意義●
薬剤師の情報活動は患者志向、問題志向という概念に基づいている。薬剤師には独立した職業人として、薬物治療に対する責任がある。特に高齢化社会が問題となり、慢性疾患の割合が多くなっている今日では、薬剤師の情報活動(服薬指導、患者啓蒙、助言)がその患者の薬物治療の成否を左右する。こうした背景で薬歴は、薬剤師が薬物治療を評価し情報活動していくための客観的情報であり、医師のカルテに相当する重要なものである。日本では、薬局の情報活動を推進しようと、調剤報酬に薬歴管理料や指導料が加わった。これは、情報活動を行う薬剤師にとってたいへん喜ばしいことである。しかし薬歴を完備することや指導文書を患者に渡すことが情報活動の目的であると誤解されている節もある。あくまで、薬物治療をより有効で安全なものにする手段として、薬歴を整備し活用することが求められる。
5-3●20年間の情報活動●
薬歴を活用した業務は、データ(記録)を検索し、処方内容の合理性を検討することから始まる。そこで得た情報をもとに患者面接を行う。こうすることで、記載事項が完全で問題なくみえる処方せんの中に、数々の処方疑義が見い出せるようになった。つまり、情報活動により、薬剤師の処方(薬物治療)に対する評価材料が飛躍的に向上したのである。
こうして、薬歴の活用が薬局業務を処方せんに記載された医薬品だけを考えるという物質志向から、処方せんとその患者の今までの記録で薬物治療を考えるという情報志向に変えた。しかし、情報志向に変わった薬局業務が初めからうまく進んだわけではなかった。
5-3-1●医師との連携●
薬剤師が情報を利用するようになると、医師の薬剤師像がただの薬の供給者から薬物治療のパートナーに変わり始めた。しかし、医師がこのように考えるまでには時間がかかった。
★ 情報活動がない頃の問い合わせ★
処方せんだけを頼りに調剤していた時代には、薬剤師の問い合わせといえば、含量や投与日数漏れなど、調剤上の事務的な問題がほとんどであった。このような問い合わせには、処方医でなくとも回答できるものが多く、忙しい医師が直接返答することはまれであった。時には、こうした問い合わせが医師に伝わってないこともあった。
★ 情報活動により問い合わせの内容が変わった★
しかし、薬歴を活用したり、患者面接することで、薬剤師の処方疑義がコンプライアンス、重複投与、アレルギーなどに関わるクリニカルなものとなり、医師と直接話し合わないと解決できないものが多くなった。たとえば、降圧剤を服用している患者の「アダラート(10)1日4錠 毎食後及就寝前」という処方が、2ヵ月前から、のみ忘れが多いことで「アダラートL(20)1日2錠朝夕食後」と変更になった記録があるとしよう。その患者が来局して、医師から特に指示もなく、以前の内容に戻っていた場合、薬剤師には、処方医にカルテの見間違いはないか、治療方針の変更か、そうなると患者のコンプライアンスに影響はないかなどいろいろな処方疑義が生じる。このように薬剤師が情報活動をすることで、その薬物治療を検討する機会が増え、医師に問い合わせする内容も変わった。
★ 電話にでてくれなかった医師★
こうして処方疑義が多くなったが、薬剤師からの問い合わせの電話に医師はなかなかでてくれなかった。それは、前記の薬剤師の問い合わせは事務的な問題が多いという慣習があって、薬剤師が情報を活用していることが理解されていなかったからである。そのため、医師に確認をとらなくては解決できない疑義の場合、処方せんと記録を持って医師を訪ねなくてはならないことがあった。たとえ医師不在で問い合わせに時間がかかる場合でも、患者に問い合わせが済むまで薬の交付を待ってもらうこともあった。
★ 問い合わせを続けていくと★
当初、こうした問い合わせは医師に煙たがられたりした。しかし、薬歴を活用して医師の誤りに気付いたり、患者情報からアレルギーや重複投与を回避したり、患者面接で得られた治療上重要な情報をフィードバックするといった実績を重ねるうちに、薬剤師を信頼し情報活動に賛成してくれる医師も多くなってきた。
★ 信頼を受けた医師からは★
医師は、薬剤師の問い合わせを徐々に重視してくれるようになった。その現われとして、問い合わせに対して医師が直接答えてくれることが増えた。また、薬歴の存在意義を理解する医師が増えた。こうした医師からは、前回処方の内容や患者のアレルギーなどを薬歴から確認するよう依頼されることもあった。こうして薬局の情報活動が医師に信頼されはじめると、治療方針を説明したうえで、使用医薬品を相談されるような薬学的な会話が多くなり、治療の良きパートナーシップがとれるようになった。
5-3-2●患者への働きかけ●
薬物治療の主役は患者である。医師、薬剤師がいくら努力しても、患者自身が治療を理解し、積極的に治療に参加しなくては効果は期待できない。薬剤師が情報活動をするのもこのためである。薬剤師の情報活動が患者に理解され、協力を得られなければ、いくら努力しても先には進まない。
★ 患者に解ってもらえない情報活動★
しかし、薬剤師の情報活動は患者にはなかなか理解してもらえないことが多い。時々、薬剤師が医師に問い合わせをしても処方内容が変わらないことがある。こうした場合、薬剤師には、医師に薬物治療の安全性を確認できたという自負があるが、患者には、問い合わせの有無に関わらず同じ薬が渡るので、医師への確認が自分の利益にどうつながっているのか実態がつかみにくい。さらに、問い合わせにより待ち時間が長くなるのだから、逆に不利益だと思われることが多い。実際に何度も「私の薬はまだ?」と薬剤師に聞く患者、「問い合わせなどいらない」という患者、待ち時間が長くなった上にアレルギーなどを確認しようとすると「そんなことはいらない」と帰ってしまう患者もいる。
そのため薬剤師はいかに患者の待ち時間を少なくするかに努力を費やしている。なぜなら、待ち時間が患者にとって薬局の優劣をつける大きなポイントとなっているのが現実だからである。水野薬局でも薬剤師の増員やコンピュータのスピードアップをはかり努力してきた。しかし、これだけの努力や出費の目的が情報活動のためにあると患者に理解されることは稀であった。
★ 患者への説明★
以前は薬剤師と患者が会話することは少なかった。そのため薬剤師が質問すると驚く患者がいた。また、薬剤師にも経験不足があった。
情報活動は、薬歴の必要性や情報活動の意義が患者に理解されなくては始まらない。そこで、薬剤師がなぜ問い合わせをするのか、住所などプライバシーに関わる情報がなぜ必要なのか説明することにした。例えば、患者住所の確認の際には、その情報によって処方変更があった場合に薬を届けることができるようになることを説明した。また、OTCを含む他でもらった薬の情報は、重複投与が避けられたり、相互作用の問題が解決できるようになることを説明した。こうした説明を一度にではなく機会のある度に繰り返していくうちに、患者がこちらの会話に耳を傾けてくれるようになった。さらに、患者が薬剤師との会話に慣れ、積極的に参加してくれるようにもなった。
★ 患者の理解★
こうして、患者から情報活動に対して徐々に理解を得た。そして、薬歴も充実したものになっていった。
薬局の情報活動が患者に理解されると、患者自身がその情報を利用することもある。
「おたくでもらっている高血圧の薬名を教えてください。」と患者から電話があったことがある。どうしたのかと尋ねると、
「風邪ひいちゃって、近くの開業医にかかるから」と言っていた。
この時は、その患者の了解の上、現在服用している薬の他にアレルギーなどの情報も開業医に報告することになった。このように薬局の薬歴が患者が来局した時だけでなく、その患者の薬物治療全体に生かされ始めた。
5-3-3●実感したコミュニケーションの大切さ●
薬局で情報活動に取り組むと薬剤師の仕事にコミュニケーションがいかに大切かが実感できる。
しかし、情報活動をしていくうちに情報を収集、管理することが当り前のようになり、薬剤師自身が情報や情報活動の意義を見失ってしまうこともあった。例えば、事務的に情報収集を行ったり、情報をろくに利用もせずに患者と会話を進めている場合である。また、「情報がある」という安心感、満足感が先に立ち、その情報が間違っていることに気付かないこともあった。
その都度、情報活動の本来の意義に立ち返った。ここで、当局で患者とのコミュニケーションをどう考え、実際にどう行い、薬物治療の有効性、安全性を高めているか紹介する。
★ 患者とのコミュニケーション★
薬剤師が患者からよき信頼関係を得られるよう努力している。
・基本問題
患者と薬剤師の会話は、ただの薬、服用方法の説明ではない。つまり薬剤師が一方的に知識をたれ流しするのではない。患者がどういう情報の提供を望んでいるか、それを薬剤師が患者にどのように説明、指導していくかがポイントになる。そのため、薬剤師が患者との意思の疎通を図ることが基本となる。
・患者の心理
患者はさまざまな不満、不安を持っていることがある。待ち時間が長いと怒っている患者、実際の病状以上に心配を抱いている患者、さまざまである。
・患者の期待、信頼
患者は薬局に何かを期待して来る。それは待ち時間が病院に比べ短いことだけの場合もあるが不安や疑問を解消して欲しいという期待をもつ患者も多い。実際に、薬効など詳しい説明を望んでいる患者も多くなっている。それに薬剤師が応えていく中に患者との信頼関係が生まれる。
まず、患者に会話に耳を傾けてもらえるよう「○○さん」と努めて名前で呼ぶことから初め、患者と対話を持つよう心がけている。また、その日の患者の状態(仕草、態度、会話など)を注意深く観察して、患者が薬剤師に何を望んでいるかあらかじめ知るよう努力している。
★ 実際の心構え★
薬歴は患者のプライバシーに関わる情報である。薬剤師が患者のプライバシーを守ることは当然の義務である。そのため、患者がしゃべりやすい環境の整備を心がけている。
・プライバシーの確保
薬剤師との会話を隣の患者に聞かれないように隔壁を作ったり、アナウンス、BGM用のスピーカーを待合室患者の頭上に設置して、他の患者の目と耳から独立したような構造を処方せん受け付け、薬の交付の際にとっている。
・素直にしゃべってもらう
白色は清潔そうに見えるが、親密な会話をする環境には適当ではないと考えている。そこで、待合室の壁や白衣の色は白系統でなく、落ち着いた色調にしている。少しでも患者の気持ちが安らぐようにすることで医師には言い出せなかったことを話してくれることがある。
★ 実際に薬歴を会話で活用するには★
薬歴の情報は、投薬歴を基本に患者との会話から得られたデータ(アレルギー、患者住所など)を加えていくと、次第に増えてくる。このデータを時に応じた確認を怠り整理しないで闇雲に記録していると、いざという時に使えないことになる。
患者住所を間違えて記録すれば、記録の住所からでは患者に連絡が取れないことになる。これでは緊急時に役に立たない。また、投与日数毎に規則正しく来局している患者の場合、「コンプライアンス良好」という先入観が薬剤師にできてしまう。しかし、こうした患者でもコンプライアンスが悪かったことがある。この患者のコンプライアンスの状況は来局がたまたま不規則になった時に確認して、気付いたものである。
水野薬局では、機会があるごとにデータの確認や更新に努めている。まず、何か疑問を感じたときには必ず患者に確認をとることにしている。また、薬歴などから疑問、問題点を見つけ、薬剤師同士で処方検討会を行い、その患者、その薬物治療を話し合うようにしている。さらに、保険請求のチェックも薬剤師自身で行い、再度処方内容を見直し、薬歴に間違いはないか検討している。これにより、データが常に評価され、その患者の薬物治療を考えることや即時の対応のために価値のある情報になっている。
★ 会話の工夫★
・Open Question とClosed Question
Yes.Noで答えが済んでしまうような質問(Closed Question)は避けて、患者がしゃべらなければならない質問(Open Question:What. Who. Why. Where. When. Howを用いた質問)を心がけている。
例えば、コンプライアンスを確認の場合、「この薬をちゃんとのんでますか?」とクローズドクエスチョンで質問しても、「はい。のんでます。」とYes.Noで会話が終わってしまう。自分を飾ろうとするのは誰でも経験することである。たとえ服用していなくても「のんでいます」と答えてしまうのが自然ではないだろうか。これに対して、
「この薬をどの様にのんでますか?」とオープンクエスチョンにすると、
「1日3回食事の後にのんでいます。たまにお昼の薬を忘れてしまうことはあるのですが」という回答になり、さらに、
「どうして、お昼の薬をのみ忘れてしまうのですか?」と質問すると、
「仕事の関係で、昼食が不規則なものですから。」となり、面接の糸口ができる。
このように、患者が「Yes」、「No」以外で答えるような質問をすることで、会話が膨らみ、患者のその薬に対する隠された意識、服用上の問題点が表に現われることが多い。また患者が薬剤師に望むことを知る機会が増えることになる。
・薬歴を利用しての会話
また、薬歴から処方の経緯などを認識するだけでなく、その内容の変化を患者との会話に加えることで、
例1)「血圧の薬が前とかわりましたね。前の薬で何か不都合がありましたか?」
「この間の薬をのむとフラフラしちゃって、先生が変えてくれました。」
(副作用、アレルギーのデータ)
例2)「通院間隔が、随分空きましたけど、その間お薬はどうしていたのですか?」
「のみ忘れた薬があったので、それをのんでいたんです。」
(コンプライアンスのデータ)
例3)「○月○日にお薬を渡しましたが、それからずっと診て頂かなかったのですか?」
「治ったと思って、病院に来なかったの。」
(症状の改善が服薬に影響を与える例)
のような回答を得る。こうした小さな事実を聞き漏らさず記録し、積み重ねていくと、アレルギーの発現、コンプライアンスの状況、患者の薬物治療に対する意識などの情報ができてくる。
薬剤師が上手なコミュニケーションを心がけることで、その患者の現在の状態、その患者が家庭で行っている薬物治療の状況、問題点を把握できる機会はいくらでもでてくる。それを医師にフィードバックしたり、その情報をもとにその患者の薬物治療を考え、指導、助言することでコンプライアンスの向上や適切な情報の提供に役立っている。
5-4●さらなる情報活動のために●
さらに情報活動を円滑にしていくために水野薬局には努力目標がある。
5-4-1●良質な情報の不足●
分業先進国の薬剤師は、情報活動のためにいろいろな文献をあたり、非営利的に評価された情報を使うことが習慣になっているという。
しかし、われわれは、医薬品情報を営利を目的に作られた添付文書集で補ってしまうことがある。この反省から、基礎となる医薬品情報には、プロフェッション(薬剤師)が評価した情報を使おうと努力している。
・情報の整理、評価
まず、文献にあたる努力をしている。一つの文献で全てを解決するのではなく、それに関した別の視点の文献を探し、両者を客観的に評価する。これにより、自分の情報ができていく。
そして、各局員が興味のある文献から得た情報を全局員の前で発表する。それを「グランドラウンド」と称して行っている。発表者と別の視点で局員がその演題を見つめ、意見を出し合うことで、その情報のより客観的な評価に役立っている。
また、このような勉強会を地域の薬局と合同で行ったりしている。これをさらに進め、将来、実務者による情報集を作ることを目標にしている。
5-4-2●薬局の非能率●
★ 患者の待ち時間★
以前、水野薬局では、待ち時間調査を行った。結果は、平均待ち時間約15分であった。その原因を追求してみると、疑義照会への時間、料金計算の間違いなどルーチンワークの不手際があったことは否めないが、問題は他にもあるようである。
★ デンマーク研修報告★
当局員、平野智也のデンマーク研修報告によると、調査した薬局の一処方当たりの平均剤数は、1.6品目であり、平均の調製に要する時間は、約100秒だったという。
また、デンマークの薬剤師は液剤、散剤の調合は基より錠剤のシートに鋏を入れる作業もなく、情報活動にほとんどの時間を費やしているようである。しかも、調剤室の業務はファーマシーアシスタントと呼ばれる薬剤師以外の職種が行い、薬剤師はそれを監督している。彼は、日本と分業先進国の薬局業務の違いを実感してきたようである。
★ 問題点の抽出★
こうした分業先進国と日本の薬局業務を比べたり、実際に情報活動に取り組むとさまざまな問題点が見えてくる。
★ 集約的な業務の見直し(薬局業務の合理化)★
薬剤師は薬局業務の監督者であり、患者への情報提供者であると考えている。そのため患者と接する機会を増やすよう努力している。
・非薬剤師の業務参加
薬剤師の監督下で非薬剤師に任せられる仕事はないか?
実際に非薬剤師に薬局備品の管理や環境整備、既製包装医薬品の棚への充填など調剤以前の業務を担当させている。これにより薬剤師がよりクリニカルな業務(患者面接、情報の整理など)に専念できるようになって来ている。また、薬剤師と別の観点から、「こんなに薬が飲めるのかしら?」「2週間毎に患者さんは大変ですね」という話になり、多剤使用や投薬形式などの問題を再確認する機会にもなっている。
★ 多剤使用の問題★
「薬づけ医療」は薬剤消費額を増大させるだけでなく、薬物治療に直接的な影響を与える。まず、多剤使用による相互作用の問題である。医薬品の製造承認の有効、安全性の評価は、その薬剤のみで行うのが通例である。つまり、多剤併用による安全性は確立されてないのである。実際に多くの薬が処方されている患者から薬疹などの副作用を訴えられた場合、どの薬の影響なのか判断することは非常に難しくなっている。また、コンプライアンスへも悪影響を与えている。コンプライアンスの良し悪しにより、患者への影響(発作の発現等)が大きいてんかん患者の場合、その危険性から剤数が2剤位になっていることからも容易に分かるだろう。
★ 協議の場をつくる★
このように実際に問題点があり、これからも出てくるだろう。しかし、薬剤師がこのような問題を抱えていても、それが医師や患者に広く理解されなくては解決の糸口ができない。これは情報活動を20年間行ってきた反省でもある。自分たちの努力目標をP.R.すること、そして他の医療従事者と協議することを第一に考えている。
・連絡会議
医師、病院との定例連絡会議
最初のうちは、単に医師側からの連絡事項の伝達だったが、最近では薬局側の働きかけで合同の勉強会が行われたり、薬局で問題になっていること(癌患者への服薬指導など)を検討する場になっている。薬局側の問題が医師、病院側に伝わることで薬局業務が理解され、少しずつではあるが改善されている。
・水野講演会
われわれ自身の研修であると同時に医師を初め他の医療従事者との協議、交流の場となっている。演題も薬局で問題となっているトピック(高齢者の薬物治療など)を選び、行っている。この講演会は医師から賛同をえると同時にそこでかわされる質疑応答が実務に役立っている。
5-5●まとめ●
薬局で情報活動を行うことの大切さはいろいろな形で検討され、薬剤師の中では周知の事となっている。しかし、実際に取り組んでみるとさまざまな障害にぶつかることが多いのではないだろうか。水野薬局でも試行錯誤の連続で、時には投げ出したくなることさえあった。
はじめから事が順調に進んだことは少なかった。継続は力なり。情報活動により、一人でも多くの患者が納得して薬物を服用すること、治療への参加意欲を持続することが、薬剤師の喜びであり、患者の幸福につながる。つまり、「情報活動(薬歴の活用)は、薬剤師の仕事の本質である。」という信念を常に持ち、困難を乗り越えて行くことが、薬剤師の使命なのだと考えている。
今後も、情報活動を行う一実務者として、薬剤師、他の医療従事者と協議の上、問題を一時的にではなく根本的に解決していきたいと思っている。
日本の薬局が患者の利益を考えている分業先進国の仲間入りできるよう、目的を見失わず努力を重ねていきたい。薬歴は患者の薬物治療のためだけではなく、薬剤師自身の仕事を再検討する道具でもある。
【参考文献】
平野智也:デンマーク研修報告、ラドフス薬局実務調査。